獏(バク)の子守唄 (ポエム部屋)
2020/05/25
スヤスヤと寝息をたてて みんなが寝静まるころ
わたしの仕事は始まる…。
ママにお休みのキスをされて
お人形を抱きかかえながらベッドにもぐりこんだ女の子が
こわい夢を見始めたら
即座に飛んで行って
わたしはその女の子の夢を食べてあげるの
やがて女の子は 安心してまた眠りの世界に落ちてゆく
毎日夜がはじまると
あちらこちらで こわい夢を見始める子供たちがたくさんいるの
わたしは 一刻でも早くその子供たちの元へ駆けつけ 安心を与えたい。
眠る暇がなくてもいいの
こどもたちが心地よく眠れるのなら
それに 朝になって目が覚めたら もちろん誰も わたしのことなんて覚えていない
でもね
表には出られない存在でも
わたしだって密かに たまにはつぶやきたい…。
それが <獏の子守唄>
もし良ければ たまには耳を澄ましてみてほしい
風と共に枯れ葉が転がっている ざわめきと一緒に
<獏の子守唄>が
ちいさく
ちいさく聴こえてくるかもしれない…。
【 イラスト menkosora 】